皆さんこんにちは。池袋のクラウド会計に強い税理士倉下です。

先日出席した税理士会の研修でドキッとした裁決事例がありましたのでご紹介いたします。

平成30年6月19日裁決のもので、「事業の用に供した事実」が争点です。

こちらをご覧いただいている方の多くは減価償却をご存知かと思います。

この減価償却の対象となる減価償却資産の範囲は次のとおりです。

「法第2条第23号(減価償却資産の意義)に規定する政令で定める資産は、棚卸資産、有価証券及び繰延資産以外の資産のうち次に掲げるもの(事業の用に供していないもの及び時の経過によりその価値の減少しないものを除く。)とする。」

上記のとおり、事業に供していない場合には例え購入済みであっても減価償却はできないわけです。

これを念頭に考えていきましょう。

本題の資産は太陽光発電設備です。

もう少し細かく記載すると、発電システムとフェンスです。( イメージとしては上記の写真のような感じでしょうか。)

では、ドキッとした本件の経緯を確認していきます。

本件は、A社(3月決算法人)が太陽光発電設備を3月中に設置工事を完了し、その引き渡しを受けました。

発電する電力については、売電もしくは自社使用することが一般的ですが、A社は全ての電力を売電する契約を結び、売電する為の設備(系統連係工事)は同年9月末に完成予定となっていました。

A社は3月末までに完成引渡を受けていたことから、太陽光発電設備(発電システム、フェンス)について減価償却資産(※)として申告しました。(※)旧措置法42条の12の5 生産性向上設備等を取得した場合の特例を適用しました。


上記で記載した事実だけを見ると減価償却資産として考えて問題ないように感じてしまいませんか?

多分、私もお客様から上記の事実だけを口頭で聞いて判断してしまったら減価償却資産として申告してしまうと思います。(実際は詳細まで確認しますのでご安心ください。)

結論に入りますが、まずこちらの法令解釈の抜粋をご覧ください。

「事業の用に供したと認められるか否かは、業種、業態、その資産の構成及び使用の状況を総合的に勘案し、その資産をその属性に従って本来の目的のために使用を開始したといえるか否かによって判定するのが相当である。」

上記の解釈に照らすと、発電システムは決算期末の3月時点では目的である「売電」を開始できておりません。(系統連係工事の完了は9月末であるため)したがって、発電システムは事業の用に供されていないという結論です。

また、フェンスについては、危険防止のため本件発電所内への立入りを防止する措置を講ずる必要があり、発電設備の設置後速やかに設けることが望ましい。また、本件発電システムとフェンスは物理的にも機能的にも一体とはいえないことから別個の減価償却資産である。これらを根拠として、フェンスについては引渡日(決算期末)から事業の用に供されたと認められるという結論です。

つまり、一の計画の下に行われた一連の設備投資であっても、それぞれの減価償却資産ごとに、事業の用に供した事業年度を判断し、当該判断により各事業年度において特別償却等の適用を受ける必要があります。

設備投資については、節税効果の高い制度がある反面、上記のとおり詳細まで確認しないと否認されてしまうこともあるので取得の計画など税理士と連携いただくことをお勧めします。

倉下税理士事務所では、設備投資による減税についてのご相談も承っております。お気軽にお問合せ下さい。